津村記久子『ワーカーズ・ダイジェスト』

ワーカーズ・ダイジェスト

ワーカーズ・ダイジェスト

最近どうも気が散って泥棒読みがいつもにも増して酷いのだけれど、これは珍しく通しで読んだ。
(ちょっとネタバレ。)
仕事の打ち合わせでたまたま会った二人が、名字(佐藤さん)も背格好も年齢も誕生日までも同じ(31歳)ということが分かる。その時に何かがあったとか、再度会うということもなく、それぞれの日常が淡々と延々と描かれ(仕事のやーなあれこれとか)、その中でちらり、ちらりと「あーあの人なんだっけ」ともう一人の「佐藤さん」が思い出され…という話。恋愛濃度の極めて薄い「ボーイミーツガール」。人とのつながりって案外このくらいの温度で出来てくるのかも。よかったです。