マザーズ

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金原ひとみ。小さな子を持つ3人の母たち。専業主婦・作家・モデル。一見したところ恵まれているそれぞれが、それぞれに崩壊してゆく話。怖いっ。
…という感想はあんまりか。
この3人は同じ認可外保育所に子どもを預けていて、旧友だったり仕事つながりがあったりしてということから「ママ友」になる設定で…というともうお決まりの(?)ママ友どうしの関係をいやらしく描くのかと思ってしまうのだけれど、この人の場合はそうはならないみたい。見た目はいいのだけれど、内側がそれぞれにひたすら崩壊してゆく。そのルートは不倫だったり薬物中毒だったり虐待だったりするのだけれど相似形といえば相似形。そしてその「決壊点」は全然予期しないところに出てくる。
この作家のよく知られた『蛇にピアス』(芥川賞)は、生きづらさ→自傷(ピアス?刺青?)という話かなー、と思って避けたので読んでいない。生きづらさを体に求めたり還元したりという話はどうも苦手らしく(なぜだろう)、この本の薬物中毒の人の話もあーあ、と思ってしまったのだけれど、でも全体的には面白かった。
あと、本を図書館に返してしまったのでうろ覚えなのだけれど、冒頭付近の「作家」の語りの中に、子どもがごく小さい頃は言葉というものが全く通用しない存在で、小説を書くこと(あるいは文章を書くこと?)が否定されるようでつらかった、少し大きくなって言葉を使うようになってきて(馴化・去勢というような言葉を使っていたかも)また書けるようになってきた(楽になった、かしら?)…というような記述があったのが興味深かった。(この人はまた最後の方で、小説を超えるような圧倒的な現実を前にして、小説の無力を語っていたりもするのだけれど)