広島の工場?

工場

工場

このあいだ芥川賞とった人の、賞以前の作品。表紙の絵がたぶんあそこで見た画家の作品だなあ…とひっかかっていた本。そして内容と奇妙に合っている。小学生の時「大きくなったら小説の表紙に合う絵を探す仕事の人になりたいです」という作文を書けばよかったなあ。

その町の人のあいだでは、そこで働けること自体が名誉視される、そんな工場で働く3人の男女が描かれる。何が生産されているかは明らかにされていない。主人公たちはそれぞれ意義が不明な、まったく不毛なように思われる仕事を担っている。私はコケの研究の人に思い入れを抱いた。
ありえないほどに広く、いびつにデフォルメされた工場。シュールといっていい作品なのだけれど、妙にリアルな設定だったりする。3人の立場が契約社員派遣社員、正社員(よく分からない特別待遇の)と異なっているところなど。
作者は広島出身と聞いていたので、マツダマツダ?でもこんな作品に対してモデルの詮索なんてナンセンスですよね、と思いながら読んでいたのだけれど、ネットで見かけた作者インタビューでも「自動車メーカーで働いた経験から」と答えているので、やっぱりマツダのようだ。工場の中に大きな川があって、「工場ウ」という固有種がいて、主人公たちが長いながい橋を渡るというクライマックス(というには盛り上がらないが)が印象深く、Googleマップで工場を呼び出し、地図を眺めた。
(あれれ、また川と鳥の話にたどりついてしまった。)