この秋見たものいろいろ

見たり読んだり出かけたりしているうちに日々はどんどん過ぎてしまう。何を見ながら何を思ったか、どんどん忘れてしまう。
・「お伽草子―この国は物語にあふれている」サントリー美術館、9月19日(水)〜11月4日(日)
『いまは昔、むかしは今』というシリーズの本を思いだしながら見た。ある一群の絵のかわいさに悶絶しました。あと清水清水!(なんかもう少し色々考えた気がするけれど忘れた)
・「リヒテンシュタイン展」新国立美術館、10月3日(水)〜12月23日(日・祝)
日本や中国の染付や色絵の磁器がタワー状に組み上げられたものが出ていた。宮殿装飾としてはわりとあるものだとは思うのだけれど、何がどうしてああいうことになったんだろうか。銀器など工芸品もたくさん出ていた。「明治以前の日本では絵と工芸の距離はぐっと近くて西洋の「美術」の考え方が入ってきて分けられてしまった」的なことが言われていてつい思い込んでしまうのだけれど、西洋でも絵と工芸の距離だってそう遠くはないんじゃないか(と自分に言い聞かせる)。
・「近代洋画の開拓者 高橋由一展」京都国立近代美術館、9月7日(金)〜10月21日(日)
東京で見逃したのを拾う。由一って人生の半分が江戸時代なのだよな。
人物画がたいへんマニエリスティック(婉曲表現)でありました。山形の名士夫妻の肖像がいくつも出ていた。三島県令の開いた道路を描くという仕事で山形を旅しているので。山形か…。
学生の頃に見慣れていた(というかいつも通り過ぎていた)絵に再会する。その絵を含めて、風景を描くあの光の感じ空の感じ、あれいいなあ。
常設の方で京都の油絵の先駆者・田村宗立の特集がやっていてお得でした。
・「京都画塾細見」京都市美術館、8月25日(土)― 11月25日(日)
京都に行くたびについふらふらと入ってしまう京都市美のコレクション展。だってあのポスター見たら行かずにはいられないじゃない。だれがどの系統という話。
・「絵解きってなあに?」龍谷ミュージアム、2012年10月13日(土)〜11月25日(日)
去年善光寺のふもとの西光寺で絵解きを聞く(300円)という体験をしたところなのので、うれしくなって見に行った。
かわいらしいポスターで宣伝していて子ども向け?という雰囲気を出していますが、たいへんがっつり濃ゆい展覧会でした。子どもむけのツカミもしっかりとありました/そしてこれは案外門外漢の大人へのガイドにもなっている。「絵解き」という語義を多様に展開しているけれど、やっぱりキモは絵に沿って語るあの語りの「場」や「人」(熊野比丘尼)のことでしょう。それ用の道具も出ていた。と、思うのだけれど時間が足りなさすぎた!!私は展覧会もまんがも2回見ないと咀嚼できないのだけれど、1回目を見終わらないうちに閉館時間が来てしまった。絵解きの様子を映像で見せるシアター上映の時間も逃してしまったし。もっと計画的にならないとなあ。
というわけで図録を見ていたら、あの大きな画面を分割して物語がいろいろ描いてあるタイプのやつだと、「見えない」とよく言われるというはなし。そう、見えないのだよね。絵解きの時、あの絵って、見えないんだよ(昔の人は目が良かったとか?)。
つけたし:中国の巻物にも裏にあらすじが書いてあって立てて使うやつがあったらしい。へえ!江戸の名所絵巻にもそんなのがあったよね!
参詣曼荼羅も出ていたし、お伽草子を思い出しながら見ても面白いと思います。
・「清雅なる仏画−白描図像が生み出す美の世界−」大和文華館、10月7日(日)〜11月11日(日)
吉川霊華の残響で、白描画ってなんだろなーと思ってはるばる奈良をまわる。線は意外にゆっくりで太かった気がする。ちょっとだけ色を入れるあの感覚は霊華の絵にもある。
くりくりっとした目がポイント。華厳五十五所絵がかわいらしかった。鳥獣戯画の断簡(一部)も出ていたのだけれど、最後に見るとなんだか線がヤワく見えた(気がする)。
あっぱれなくらい真面目というか学術的な解説文だった。でも特にインテリというわけでもなさそうなおばあちゃまが結構ちゃんと追って理解していた*1のにさらにびっくり。奈良すごい。帰りの特急では柿の葉寿司。ああうれしい。
・「江戸の風雅」群馬県立近代美術館、9月15日(土)〜11月4日(日)
ここの館で持っている「井上コレクション」を軸に、江戸時代の絵の色々な特質を切り出す展覧会。軽妙洒脱とか。ありそうでない企画かも。
立原杏所ってまだよく分からない人だなあ(しかしまあ魅力的なこと)。大岡春卜の淀川絵巻が見られてよかった。川の分かれ目を軸にした大坂の街のパノラマ!ほかにも川の絵がいっぱいあってうれしかった。住吉如慶のの瀟湘八景図巻や土佐光起の十二か月の歌の絵巻も興味深かった。

*1:大声でいちいち読み上げて反応していた