最近読んだ

上田秋成―絆としての文芸 (阪大リーブル39)

上田秋成―絆としての文芸 (阪大リーブル39)

むー。面白かった。秋成入門書プラス、アルファ(なのかな?)。
初期の『雨月』は出版されたが、晩年の『春雨物語』は出版されず著者直筆のもの、およびその写ししか存在しなかった(そもそも刊本より写本の方が格が高い)。著者直筆のものは複数存在、特別な受け手のために書く、書体も含めて享受される。作中に出てくる手紙の書体を変えて書き、その書体について(文字のへたくそさについて)、本文が言及する。
韻文は作者直筆のものがくりかえし書かれて掛軸になったり短冊になったりするということがごく一般的にあるわけだけれど、そしてそれは絵に近いかたちで鑑賞される(たぶん)のだけれど、長文の散文についてもそれがありうるということか。それは秋成のコレについてのみ特別に成り立ったことなのか、あるいは同時代にあったのか、もっとずっと古く(日本や東アジア文化圏で)あったことなのか。