黒田日出男『豊国祭礼図を読む』
- 作者: 黒田日出男
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2013/11/23
- メディア: 単行本
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この祭礼には秀吉の正妻・高台院(=北政所=おね)だけが臨席していた。その主賓たる高台院が絵の中で「怖い男顔のしわくちゃなおばあさん」として描かれている(狩野内膳筆)。なぜだろうねえ!というのが話題の一つ。
発注者は淀殿・秀頼で、家康寄りの行動をとる高台院に対して淀殿が「裏切り者!」と怒り、あんな顔で描かせて嫌がらせしたのであろう、というお話。そして数年後に描かれた同主題の別作品(狩野孝信筆?)では、高台院は品良く描かれている。これは高台院らが描かせて取り替えたものなんじゃないか…と。
ずいぶんチマチマした嫌がらせだなあとか、公開したとは言ってもその「おばあさん」はすごく小さいのでみんな気づくんかな?(高台院本人さえ気づけばいいのかな)とか、突っ込みたいところは色々あるけれど、あの絵・祭の背景にある「戦間期(関ヶ原合戦/大坂の陣)」の豊臣徳川間の緊張感をイメージすることが出来て良かった。
第3の作である岩佐又兵衛工房の同主題画(私はこれが一番好き)では、「かぶき者」の刀の朱鞘に書かれた「いきすぎたりや二十三 八まん ひけはとるまい」の語に注目。これは当時流行していたフレーズ*1だけど、普通は年齢のところが「二十五」のはず。この絵ではどうして「二十三」なのか?23歳で死んだある重要な人物の見立てなんじゃない?という話も面白かった。
*1:「乱世が終わったのに生き残ってしまった/生まれ後れた」感があふれていてとても印象深い