正木香子『本を読む人のための書体入門』

本を読む人のための書体入門 (星海社新書)

本を読む人のための書体入門 (星海社新書)

もとは印鑑用に開発された「淡古体」がマンガで「ホラー書体」として使われるようになった経緯が興味深かった。マンガのセリフに使われた最初はドラゴンボールで、最初はホラーイメージはなかったけれど、ある登場人物のセリフに使われて以降…という。
本全体としてはそういう探究ネタを売りにしているというわけではなく、書体を味わうこと(感性)を大切にしたい―という感じの話(だったかな)。「この書体はこのイメージです」という辞典的なものをちょっと期待していたのだけれど、そういう本でもなかった。いくつかの書体を取り上げてそこからイメージされる「感じ」は記述されるのだけれど、それはあくまで筆者個人のもので、人によって違うということを言っている。たしかに。(そういえば、散文を書体を含めて鑑賞するということについて考えかけていたのだった。)
読むべき本の多さに圧倒された中学時代の筆者が、まずは自分の好きな・親しい書体の本から手に取ったというエピソードがちょっとよかった。