維新の洋画家 川村清雄

江戸東京博物館、10月8日(月祝)〜12月2日(日)
おもしろかった。画家の展覧会なのだけれど、むしろ歴史展示。どんな家か(祖父は大坂・長崎奉行もつとめてたという)、10代で明治維新を迎えて(1952生まれ)、ヴェネチアでどんな風に絵を学んだか。昭和の頭までどんな風に生きたか。決して器用には生きられないし、一回り若くパリで学んだ薩摩系の黒田清輝(1866生)が画壇の主流となってゆく中で、昭和9年まで生きた彼をどんな人々が支えてくれたか。まあ私の好きな話ですね。たくさんちりばめられた挿話も面白い。勝海舟は自邸に画室をつくってくれるぐらいに目をかけてくれたのだそうだけれど、勝にとっては恩のある人の孫なのか。
代表作の「形見の直垂」*1が寓意画であることは耳に入っていたけれど、ヨーロッパで仕込んだ「寓意」の思考が結構作品の隅々にまで入り込んでいるのかもなあと思いました。欧州的な寓意画とそれとよく似た趣向の日本古来の見立絵・留守絵とがどういう具合でブレンドされているかな。日本での作例は圧倒的に花鳥・器物画=静物画が多いので、修学期の静物画の作例なんかが残っていたら面白いのにな。
資料を追うのに忙しくて絵の鑑賞をする感じではなかったので、目黒区美術館で開催中の「もう一つの川村清雄展」(12月16日(日))を見るべきなんだろうな。こちらも面白そう。行けるか分かりませんが。

*1:例によってぼんやりしていたのでもう展示は終わっていた